《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 それでも男の口は止まらない。

「デタラメね…。ドウヤラ知らヌ様だカラ教えてヤロウ」

「……何を」

「ナァニ、他国では有名な話…。シュサイラスアの国王とソノ妃は大層仲の良いオシドリの様な夫婦。王女も産まれシアワセは絶頂だった。しかし身体の弱い妃はムリをしてオマエを産んだ」

「……何が言いたい…?」

「つまりオマエを産んだ事にヨリ死期が早まった。むしろそのコトがキッカケとなり妃は死んだとネ」

「…っ何、、言って……」

「妃はオマエを産んだカラ死んだ。だから国王はオマエを恨んでイル。ドウだ? リカイ出来たか?」

 男の何処か嬉しそうな、それでいて冷たい声が耳を貫く。

「俺を産んだから、死んだ…? だから恨まれて、いる?」

「ソノ様子では今マデ何も知ラズに生きて来たのダナ? つくづく哀れでオメデタイ王子よ」

「……父上が、俺を…?」

 再度口にすると左腕の刺青が急激に痛み出す。あまりの激痛に顔を歪める。

「アハハ! ヨホド衝撃をウケたか? イイね……そのカオ…。もっとボクに見セテよ! ボクはオマエが苦しむトコロが見タイんだ」

「…っ」

 男はランプをこちらに翳しながら至極楽しそうに笑い出す。
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