《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 今聞いた話を鵜呑みにする訳ではない。ライオネルがエテジアーナの事を秘密にしていたのには何か理由があるのだと分かっている。だが、目の前にいる見知らぬ男にそれを知った風に指摘された事に気が立ってしまう。

「さぁて、話を本題に戻ソウか。オマエとソコに居る人形タチは無傷で解放シテヤロウ。ソノ代ワリにさっさとフリュイの娘を寄コセ…。ドウだ、悪い話ではナイダロウ?」

「断わる…っ!!」

「……ナゼ…? 小娘一人とコノ国の平和。秤にカケルまでもナイ、バカでも解ル話ダロ? オマエもソノまま解放シテヤルと言ってイルじゃナイか…」

 それでもスズランを得体の知れない事に利用し、何かを企んでいる輩の提案を飲む訳にはいかない。

「何を企んでるのかは知らないがスズランをこんな場所に引き渡す事は出来ない!」

 最後に見たスズランの悲痛な表情が脳裏に浮かぶ。例え嫌われようともスズランを守ると決めた。もう悲しませたくない、なのにまたあんな顔をさせてしまう自分が嫌になる。
 しかし、だからと言って攫われた被害者達をこのままにしておく事も出来ない。まだじわりと疼く左腕の痛みに耐えながら必死に解決策を考える。
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