《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
核心 II
マルティーン帝国。
北東の海を越えた先にある陸地。
豊かな水源をたたえる平野に『首都 レグラン』を構築し、凍てつく山岳地帯に皇城を構え大陸全土を統治している。各国で使用している生活用水や雨水など、水源の全てにおいてを管理していると言われているとても重要な国だ。この国を敵に回せば、その土地の水源は絶たれ枯渇と共に滅びるだろうとも伝えられていた。
シュサイラスア大国との交友関係は同盟国であり、過の内乱後において両国の関係は良好な筈である。
マルティーン帝国に長く仕える近衛の家元。マデールナ家の令嬢ミリアムはメルティオールの幼馴染みにして許嫁である。以前挨拶で一度顔を合わせた事があったと記憶していた。
「メルテ…! 本当に一体どういうつもりだ! 何でこんな事を…っ」
ラインアーサは拘束されている手首を解こうと力任せに腕を捻るが縄はきつく手首に喰い込み、擦れた所から血液が滲み出す。
「ドウもコウも、オマエがボクのミリアを誑カシて奪った。その事実が今ボクを突き動かシテいるのだカラな!」
「誑かして奪う? 俺はミリアム嬢とは一度しか会った事がない。そんな事態にはなり得ない。大体その日はお前も一緒に居た筈だ!」