《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ───気がついて欲しい。
 本当は気づいて欲しいと心のどこかでそう願っていた。 スズランの中の〝ライア〟と〝警備員〟が同一人物であると言う事に。そんな想いを持て余し、事実をうち明かす好機を見失ってしまった。もっと早くこの事実と気持ちを打ち明ければ嫌われずに済んだのだろうか、と後悔しても後の祭りだが……。
 不謹慎にもこんな状況下でさえスズランの事を想い浮かべてしまった自分自身に苦笑する。

「何がオカシイ!!」

「……落ち着けよ、お前の思い違いだ。逆にミリアム嬢はお前の事を真剣に考えている」

「思い違いなモノか! では何故、何時でも何処へだって付いてキテ、あんナニもボクに懐イテ愛ラシかったミリアの態度が激変スル? ボクとアーサを比較シテはため息ヲ吐くのはドウシテだ…!?」

「だからそれは…」

「っ…オマエにナド渡さない! アレは…、ミリアはボクのモノだ…っ!!」

 激昂した鋭い視線。その蒼い瞳は猜疑心の炎で燃えている。力任せに投げつけられた杖はラインアーサにぶつかり派手な音を立て床に転がった。

「っ…待てよ! さっきから誤解だって言ってるだろ? 俺はほんの少し、彼女の相談に乗っただけ…っ、ぐっ!」
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