《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「フンッ、ヤだね。ボクはまだソノ話を信じたワケではナイ!! ソレとコレは別。……オマエは飽く迄も人質ダカラな!」

 ラインアーサは大きく息を吐き出すとメルティオールの瞳を見据えながら口をひらく。

「こんな事、ミリアム嬢にも心配かけるだけだぞ…」

「ッ…ウルサイ……。分ったヨウな口をキクな! そもそも今回の件にオマエは無関係ダッタな。アノ小娘は我々がモラウ」

 結局話が振り出しに戻り気が急く。スズランに危害が降りかかるかと思うと居ても立っても居られない。

「っ…スズランに何をするつもりだ!」

「何モいたぶるワケではナイ…。アノ娘はタダの〝鍵〟……〝アノ方〟を目覚メさせるタメの至要タル道具に過ぎナイ」

「鍵? あの方…?」

「おおっと口が過ギタな」

 メルティオールは仄暗い意味深な笑みを浮かべる。

「其方の事情はわからないが、俺にだって理由はある…!」

「フーン。随分とフリュイの娘に入れ込んでイルみたいだな…。ソレなら捕えてオマエの目の前で攻め立てたら面白いモノが見ラレるか…? ククッ」

「駄目だっ…! そんな事させない。絶対に!」

 焦りと怒りが入り混ざった感情を抑えながらメルティオールを睨みつけた。
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