《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「何時も飄々とシテるクセに。珍しく強気ダナ…。オマエの攻撃的な瞳はハジメテ見る。コレはホントに楽しめソウだ」

メルティオールの冷えた笑みに焦りが躙り寄る。

「俺にも譲れない事がある…! 大切で守りたい人がいるのはお前も同じ筈だ…っ」

 ラインアーサは拘束されている腕を僅かにずらし、片方の指で掌へ複雑な陣を描き始める。その動作に気付いたメルティオールが嘲笑い鼻を鳴らした。

「フン。何か煌像術(ルキュアス)を使うツモリだろうが無駄だ! コノ部屋には術封じの陣が張ッテある、ザンネンだったな」

「……それでも、やってみないと…分からないだろ!」

「無駄だと言ってイルのにバカなのか? ……ん? ……な、何だコノ気配は?」

 突如部屋の唯一のあかりであるランプの灯が消え、再び部屋の中は闇に包まれた。
 暫くすると何処からともなく床や壁の軋む音が聞こえてくる。その音は徐々に大きくなり、部屋全体が小刻みに揺れ出す。

「…っオマエ、ナニをシタ!?」

「…っ」

「おい…! やばくねぇかこれ?」

「あ、兄貴ぃ。一体何がどうなってるんっスか〜!?」

 建屋の外からは低く底から響く様な轟音、更に揺れが増大してゆき、流石に二人組の男たちも騒ぎだす。

「ジェル!! 術封じの陣はちゃんと発動シテるのか?」
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