《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「た、確かに発動はしてます…」

「では何だ! ナニが起こっている?」

「……風をたくさん()んだ…。あまり頼りたくなかったけど、そうも言って居られないからな」

 ラインアーサは肩で荒い呼吸を繰り返す。天候を操作する程の風を喚ぶ事はそう簡単では無い。それなりに知識と複雑な陣が必要な上、とてつもない量の気力が必要だ。よって大幅に体力を消耗する。

「バカな! スグにコノ風を止メロ…! コノママでは建屋が倒壊スルぞ!? いや、壊すツモリか?」

 嵐の如く凶暴な風が激しく壁の外を叩く、このまま壁が砕かれるのも時間の問題だ。元々朽ち果てそうな古ぼけた廃屋敷だ。倒壊も免れない。

「ひ、ひぃぃ! 何だよこれぇぇ、今度こそお終いだ〜」

「い、いや落ち着け、少しずつ嵐は弱まって来てるぞ…?」

 混乱に乗じ密かに逃走の糸口はないかと探る二人組。部屋の何処かに穴でも開けばそこから脱出路を作る事が出来ると踏んだのだ。しかし───。

「…っは、ぁ…!」

 長時間の拘束による体力の摩耗で集中力が途切れたせいか徐々に嵐は収束してゆく。

「……フン。バカめ! 天候の操作ナドと高等な技ヲ使うからソウなるんだ」

「…っつ…、、はあっ、はぁ…っ」
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