《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 汗が一気に吹き出し髪が額に張り付く。両腕が自由であればもう少し長く術を発動し続けられた筈だ。そもそも陣自体が不完全な状態だった。

「……しかし、コノ状況下で力を使ウとはね。流石に想定外ダッダよ。術封じもモノともセズに…。オマエにとってスズランという娘はヨホド特別ラシイな? 俄然興味が湧いた」

「だ、駄目だ…!! スズランに手を出すな!」

「ソコまでムキになる理由は? 唯の小娘だろう?」

「メルテ…。ミリアム嬢を大切に想っているならわかる筈だ。だからお前だって今こうやって動いてるんだろ? 俺は……俺だって同じだ、大切なんだ…。スズランを守るって決めた…!」

「ボクと同じ…?」

「理由なんてない…。大事な人を守りたい、それだけなんだ! メルテは違うのか…?」

「……フン。ボクをオマエなどと一緒にスルな!! ドコまでもイラつくヤツだ!」

 再びメルティオールの杖がラインアーサの喉笛を捉えた。

「っ…!」

「コノままオマエの喉を凍ラせてヤロウか? 二度とムダな口を訊けナイ様に…!」

「……お前には出来ない。俺の知るメルテはもっと人情味のある奴だ…!」

「っ…ナニをバカな! ボクは本当にヤるぞ?」
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