《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
二人は散々頭を撫で回され、頬擦りをされ、ライオネルが満足する頃にはすっかり揉みくちゃになっていた。
「ったく! 何言ってるんだ、俺は成人する十八迄はちゃんと父上の側にいただろ!」
漸くライオネルから解放され、自由の身となったラインアーサは乱れた身なりを整えながら呆れた口調で抗議する。
「そうだが。ならば、何故以前の様に〝父様〟と呼んでくれないんだい? 昔は父様、父様と後をついてきて、それはそれは愛らしかったのに…」
ライオネルの美しい青玉の瞳がさも寂しげな表情を浮かべる。
「なっ! もうそういう歳じゃあないだろ…」
「さあ、イリア! もっと良く顔を見せておくれ? 本当に無事で……無事で良かった。長い間迎えに行けなくてすまない。こんな不甲斐ない父を許してくれるかい?」
ライオネルはラインアーサとの会話の流れを軽く流しながらイリアーナの両肩にそっと手を乗せ顔を覗き込む。
「お父様…っ! わたしはっ…わたしの方こそこの十一年の間、何の連絡すらも出来なかったのにっ…どうか、……この親不孝な娘を許してください……」
イリアーナの瞳から次々と涙がこぼれ落ちてゆく。
「ったく! 何言ってるんだ、俺は成人する十八迄はちゃんと父上の側にいただろ!」
漸くライオネルから解放され、自由の身となったラインアーサは乱れた身なりを整えながら呆れた口調で抗議する。
「そうだが。ならば、何故以前の様に〝父様〟と呼んでくれないんだい? 昔は父様、父様と後をついてきて、それはそれは愛らしかったのに…」
ライオネルの美しい青玉の瞳がさも寂しげな表情を浮かべる。
「なっ! もうそういう歳じゃあないだろ…」
「さあ、イリア! もっと良く顔を見せておくれ? 本当に無事で……無事で良かった。長い間迎えに行けなくてすまない。こんな不甲斐ない父を許してくれるかい?」
ライオネルはラインアーサとの会話の流れを軽く流しながらイリアーナの両肩にそっと手を乗せ顔を覗き込む。
「お父様…っ! わたしはっ…わたしの方こそこの十一年の間、何の連絡すらも出来なかったのにっ…どうか、……この親不孝な娘を許してください……」
イリアーナの瞳から次々と涙がこぼれ落ちてゆく。