《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……待ってくれ! 動かしたのは本当にこの二人だけか? それに人質にされたこの者たちの意識はちゃんと元に戻るのか?」

「ウルサイなぁ。……利用シタのはソコの小物二人組のみだ! 更にソノ配下マデは知ラナイがな。抜け殻になったモノドモも十分に休養スレば直に戻るダロ…」

「そうか、分かった! ありがとう」

 騒ぐ二人組を尻目に、呆れ返った様な仕草をするとメルティオールはジェルマーノの敷いた陣の中に足を運んだ。

「……いいんですか? メルティオール殿を帰してしまっても」

「ああ。メルテだって分かってる筈だ」

「ですが…」

「これ以上事を大きくすれば両国の関係性が危うくなる」

「確かにそう、ですね…」

 ハリが隣で小さな溜息を吐いた。同時に空間移動の陣が発動し、部屋中仄暗い光に包まれたかと思うと瞬時にしてメルティオールとジェルマーノの体が薄い水の膜に覆われた。
 ふとラインアーサの脳裏に疑問が浮かぶ。

「っ…!? ……メルテ! 待っ…」

「悪かったな、アーサ…」

 ───そう聞こえるか聞こえないかの声でメルティオールが呟いたのを最後に二人の姿は光と共に消えた。

「……」

「……どうかしましたか? ライア」
< 354 / 529 >

この作品をシェア

pagetop