《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「はぇ…?」

「私は此方に居られるアーサ王子の側近です。確かに名はハリと申しますが」

 そう答えたハリに対し男は立ち上がり講義し始める。

「……いや、どう見てもそのお姿! 貴方様は間違いなく玻璃(ハリ)様!! お忘れですか? 私です…」

「一体何を言って…? ……痛っ!」

 何かを感じたのかハリが辛そうに顳顬(こめかみ)を押さえ目を閉じる。

「待ってくれ! ハリには昔の記憶が無いんだ! あまり刺激しないでくれ」

「なんと!? ……待ってください。玻璃(ハリ)様に記憶が無い? あああ、混乱して来ました。もうずっと行方知れずで捜していた玻璃(ハリ)様をこんな辺鄙な場所で見つけたと思いきや、記憶喪失でこの十一年の間アーサ王子の側近をさせられていたと…!? な、何て事だ……」

 男は項垂れながら何かを小さく呟き続けている。

「なあハリ。この人、お前の事……ずっと捜してたって…」

「ですが今は貴方の側近です。それは変わりませんし、突如現れた見知らぬ人物を信用など出来ません。怪しすぎます」

「でも。何か訳を知ってるなら話位」

「ライア。……貴方はどうしてそう…」

「アーサ王子! 私は貴方を許しませんよ!!」

 項垂れていた男が突然大声を出した。
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