《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「な、何だいきなり!」

 男はフードの下から鋭く射抜く様にラインアーサを睨みつける。

「ああっ! 玻璃(ハリ)様が覚えていないのならば仕方がない…。ここは私も一旦退くとしましょう。しかしアーサ王子! よくも、よくも玻璃(ハリ)様を側近などに…っ!! いえ、しかしこれは大収穫です。玻璃(ハリ)様は無事にご健在! あとはあの小娘を手にさえ入れれば万事解決ではないですか…! こうなれば一度戻ってまた新たに手を打つとしましょう…」

 うろうろと歩き回りながら早口で一気に捲し立てると男は再び裂け目に身を投じた。

「あ…、おい! ハリの事を知ってるならもう少し詳しく教えてくれないか? それに何故スズランを狙うんだ!?」

「……誰が教えるものですか! 平和呆けな田舎の国の間抜け王子! 私はお前の元から必ずや玻璃(ハリ)様を取り戻します。其れまで首を洗って待っていなさい!!」

 戦線布告の様に吐き捨て、男は裂け目と共に消えてしまった。

「……結局何だったんだ、あいつ」

「さあ。私にも分かりかねますね」

「いいのか? お前の事〝ハリ様〟って呼んで慕ってるみたいだったぞ? ハリも何か思い出せれば良いんだけど…。それと、あいつが使った空間移動の魔像術(ディアロス)…」
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