《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 普段からは想像もつかない程の低い声と厳しい顔つきのラインアーサにジェロームとエヴラールは息を呑んだ。

「……わ、分かったよ! 真面目にやりゃあ良いんだろ?」

「兄貴…! じゃあ俺ら王宮で雇ってもらえるんっスね!?」

「……ああ、そう言う事だそうだ。ならけじめをつけねぇとな…」

 二人は互いに顔を見合わせ頷くと、気恥ずかしそうに頭を下げた。

「よ、よろしくお願い、します…」
「っしやス!!」

「馬鹿野郎こんな時位ちゃんとやれ! エヴラール!」

「……ふっふふふ! よしっ。たった今からお前らは俺の部下だぜ!! み〜っちり鍛え抜いてやるから覚悟してろよ〜!」

 ジュリアンが二人の間に割って入ると両腕で肩を組む。この底ぬけに明るい性格にラインアーサは何度救われた事か。

「はわわっ!」

「っ…! いきなりやめろっ…じゃねぇ、やめてください…」

「お? 早速部下らしくなって来たな! んー、そうだな。特に言葉遣いは気を付けろよ? それにアーサのことは殿下って呼んだ方がいいぜ! え、俺? 俺は幼馴染だからいいんだよ! な、アーサ!」

 一番説得力の無いジュリアンに言葉遣いを指摘される様子が可笑しく思わず吹き出す。
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