《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

真意


 何時もの街並みに、何時もの大通り。しかし通常時よりも何処か静まり返っている様に思えた。
 酒場(バル)の前へと戻ってきたラインアーサは普段の様に建物の裏手側へと回り込む。
 通常ならばこの時間帯は夕刻の開店に合わせ既に仕込みが始まっている時刻だ。しかし、今はその気配が感じられない。しばらくは休業という事もありえるのか……。店の前であれだけの騒ぎがあったのだから致し方ないのだろう。ユージーンたちに申し訳ない気持ちになる。

「……結局…、皆に迷惑をかけてしまったな」

 そしていざ顔を出すべく裏口の扉を叩こうとするも、どんな顔をして良いのか分からずその場で暫く考え込んでしまった。それでも意を決して扉を叩こうとした瞬間、突然扉が開き中から出てきたセィシェルと鉢合わせる。

「わっ…!!」
「うわっ!?」

「……わ、悪い! 今扉を叩こうとして…」

「あっ! あんた無事だったのかっ…?!」

「ああ、大丈夫だ。今回こんな事になって悪かった。今日は店の方は休みなのか? ……結局マスターたちにも迷惑をかけてしまったし、俺に出来る事があれば何か手伝う…」

「っそんな事より! 早く来てくれ!!」

「どうかしたのか…!?」
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