《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……セィシェル、お前…」
「あいつ、昔にも一度だけこうなった事があって、あの時は俺が…、いや、今は早く行ってやってくれ! とにかくあんたが行けば絶対元気になるからっ。頼む…」
セィシェルの必死な言葉に気圧され、スズランの部屋へと続く外階段を見上げる。本当に行って大丈夫なのだろうか、と考え込むもラインアーサの足は自然と階段を上り始めていた。
部屋の扉の前に立ち、禁錮の煌像術を解く。短く深呼吸すると扉をそっと叩いた。部屋の中からの反応は無く自身の心臓の音がやけに大きく聞こえた。扉に手を掛け静かに中へと踏み入り、部屋の中を見渡すと木製の小さなベッドの上で膝を抱え顔を伏せているスズランを見つけた。その姿は今にも消えてしまいそうな程小さい。
「っ…スズラン!」
瞬間。思わず名を叫び駆け寄ると、ラインアーサのその声にスズランが反応した。
「……ライア…?」
緩々と顔を上げるスズラン。
自然と視線が交わる。
泣き腫らしたであろうスズランの濡れた瞳は、尚も魅入ってしまう程に美しい。
困った事に伝えたかった沢山の言葉は、いざ本人を目の前にすると中々出てこない。
「……スズラン…っその、俺……」
「……っ…ライアの馬鹿…!!」
「あいつ、昔にも一度だけこうなった事があって、あの時は俺が…、いや、今は早く行ってやってくれ! とにかくあんたが行けば絶対元気になるからっ。頼む…」
セィシェルの必死な言葉に気圧され、スズランの部屋へと続く外階段を見上げる。本当に行って大丈夫なのだろうか、と考え込むもラインアーサの足は自然と階段を上り始めていた。
部屋の扉の前に立ち、禁錮の煌像術を解く。短く深呼吸すると扉をそっと叩いた。部屋の中からの反応は無く自身の心臓の音がやけに大きく聞こえた。扉に手を掛け静かに中へと踏み入り、部屋の中を見渡すと木製の小さなベッドの上で膝を抱え顔を伏せているスズランを見つけた。その姿は今にも消えてしまいそうな程小さい。
「っ…スズラン!」
瞬間。思わず名を叫び駆け寄ると、ラインアーサのその声にスズランが反応した。
「……ライア…?」
緩々と顔を上げるスズラン。
自然と視線が交わる。
泣き腫らしたであろうスズランの濡れた瞳は、尚も魅入ってしまう程に美しい。
困った事に伝えたかった沢山の言葉は、いざ本人を目の前にすると中々出てこない。
「……スズラン…っその、俺……」
「……っ…ライアの馬鹿…!!」