《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 見ればスズランは安心しきった表情で眠っていた。その顔を見て一気に気が抜ける。

「……そうか、ろくに寝てなかったって言ってたもんな。にしても、またか。……はは…」

 肝心な所でスズランが寝てしまうという事例はこれで二度目だ。しかしラインアーサもやっと安堵して軽く息を吐く。腕の中で眠るスズランの体温が心地よくて暫く抱きしめていた。

「……おい。いつまでそうしてるつもりだ? 抜け駆けはしないって約束だったよな…?」

「!? セィシェル!」

「しかも〝またか〟ってなんだ? どう言う意味だよ」

 気がつくと部屋の入り口の扉は開け放たれ、不機嫌そうに腕組みをしたセィシェルが立っていた。

「お、お前! いつから…」

「あんたがスズに告白した辺りからだ…。へんっ! 肝心なところで失敗してやんの! ざまぁみろだ!! あ、ちなみに一応扉は叩いたからな? 立ち聞きとかじゃあないからな!?」

「ああもう、分かった。分かったから…」

 まさか本人以外に聞かれていたとは。羞恥で全身が湯だりそうだ。

「それにあんたスズは物じゃあないとか俺には言った癖にさっき〝俺の〟って言ったな!? 何が俺の大事なスズランだ…!」
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