《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「っわぁあーー!! もう悪かった、やめてくれ」

「でかい声出すなよ、せっかく眠ったのに起きるだろ? あとベッドに移すからいい加減にスズから離れろよ」

「いや、このまま俺が運ぶ…」

「なんだよ…。スズはお前だけのじゃあないからな!」

「……」

 セィシェルの文句が耳に届くが、それを尻目にスズランを横抱きにして立ち上がる。すると白くて華奢な腕がラインアーサの首の後ろにまわされ、強く抱きつかれた。

「……ん、ぅ…」

「スズラン? ……ほら、ベッドまで運ぶから」

「……ん……ライ ア…」

「大丈夫、側にいるよ」

 優しく声をかけてそっとベッドに下す。

「……よかった、良く寝てる。スズ、最近ずっと寝不足だった上に昨日から一睡もしてなかったんだ…」

 セィシェルはそう言いながらスズランに毛布をかけた。

「そうか」

「全部あんたが原因で、だけどな!」

「すまない…」

「まあ、スズも寝てくれたしとりあえず下にいくぞ。実は親父も似たり寄ったりの状態なんだ」

「マスターにも迷惑掛けてしまったな、本当情けない」

「……別に。スズも親父もあんたの事迷惑だなんて思ってねぇよ…」
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