《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 その直後、ユージーンは黙り込んだまま何処か遠くを見つめるように天井を仰いだ。
 とりあえずではあるが、今までよりも更にスズランの守りを固めて欲しいと念を押し、ラインアーサは席を立った。
 本来であればやはり王宮で保護するのが妥当な判断だろう。しかし強制では無く、やはり本人の意向を聞いてからにしたい。
 裏の扉口まで見送ってくれた二人に向き合うと再度心残りである詫びを申し出た。

「マスター。セィシェルも…。本当に何か不便があったらいつでも言って欲しい。迷惑をかけた分、出来る限りの手助けをしたいんだ」

「うるせぇな! そんなの無ぇって言ってるだろ! 帰るなら早く帰れよ、あんただって色んな奴に心配とかされてんじゃねぇの?」

「こら! セィシェル!!」

 すかさずユージーンの拳がセィシェルの脳天に落とされた。

「ぃってえ…!! 何すんだよ親父!」

「何度言えば済むんだ、その口の悪さは! 全く……。アーサ様、度々申し訳ありません。それにお礼などお気持ちだけで充分に有難いですから。それよりも、どうか今後の話し合いを優先してください」

「ありがとうマスター。じゃあ明日から頼むよ。あと、スズランにも目を覚ましたら伝えて欲しい……」
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