《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 直後眠ってしまったのも普段煌像術(ルキュアス)を使い慣れてない為、身体への反動と寝不足が重なった所為だろう。

「スズラン…。本当に君は何者なんだ、こんな……」

 スズランが何者なのかは検討も付かなかったが、先程受けた告白と腕の中で眠ってしまった愛しい温もり思い出すとどうしても頬が緩むのを止められないラインアーサだった。

 王宮に戻ると自室の扉の前にライオネルが立っているのが見え、急いで駆け寄る。

「父上…! どうしてこんな所に立って…?」

「っ…アーサ!」

 名前を呼ばれるなり唐突に抱きつかれた。思いのほか強い力が込められていて痛い程だ。

「……ごめん。心配かけて、だけどちょっと痛いよ、父上」

「また無理をしたのだ。このくらい我慢しなさい。本当に、お前はいつも…っ」

 声を震わせるライオネル。

「ごめんって。でも事件は無事に解決して民への危険はもう…」

「有難うアーサ。先程ジュリアン君やハリ君からの報告書が届いて知ったよ。それに旧市街の外れで風を喚んだんだね? 数秒程大きな竜巻が発生したのが王宮からも見えたよ」

「あまり使いたくなかったんだけど…」

「分かってるよ。お前があれを使いたくて使ったわけじゃあ無い事位はね…」
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