《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「アーサ。待っていたよ!」

 部屋へ入るなりにこやかな笑顔のライオネルに出迎えられた。

「其処に腰掛けるといい、お茶と焼き菓子もたっぷりと用意した。さあ父様に話を聞かせておくれ?」

「ち、父上。なんか俺の事子ども扱いしてないか…?」

「 アーサは私の大事な息子なのだから当たり前だろう? 駄目なのかい?」

「いや、駄目とかじゃあなくて恥ずかしいだろ…? それに俺は事件の報告処理をしに来たんだけど…」

「事件については先程また新たな報告書に目を通したし大まかな事柄は把握したよ? それにしても…。アーサは相変わらず本当にお人好しだね。ジュリアン君の報告書を確認した所、新たに警備隊を二人ほど増員させた。とあったのだが?」

 早速ジェロームとエヴラールについて確認される。何時もより厳しい顔付きになるライオネル。

「そうなんだ。今回の事件の実行犯は恐らくその二人なんだ。……でもこの二人に一番必要なのは〝居場所〟だと思ったから。ちゃんとした活躍出来る場所があればって。二人を罪人として処罰しても何も解決しない。それに二人とは別に、この誘拐事件の裏で糸を引く不信な人物が居る」

 ラインアーサの言葉を聞きながらライオネルは瞳を閉じた。
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