《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「この件にメルティオール皇子が関わってるのにそのまま帰してしまったのにも。……ちゃんと理由があるのだね?」
「……メルテ。どこか様子がおかしい気がしたんだ。よくは分からないけど、普段のメルテだったらあんな事…。俺、考えが甘いかも知れないけどメルテの事を悪人だとは思えない…」
「ふふ、お前ならそう言うと思っていたよアーサ。困ってる人を見つけるとどうしても放っては置けないのだろう? ……同じなんだな、エテジアーナと」
「……母様と?」
ゆっくりと瞼を持ち上げたライオネル。ラインアーサは全てを見透かす様な眼差しに射抜かれた。しかしどこか寂しそうなその双眸にどきりとする。
「そう…。実際にメルティオール皇子は焦っていたのかも知れないね。実は、マルティーン帝国は今とても大変なのだよ。グロス皇帝が病で死の瀬戸際に立たされている。それで皇子は色々荒れていると聞いたものでね」
「どうして父上がそんな内情を知ってるんだ?」
「ここ最近の長雨。なぜ降っていたか分かるかい? 民が外出を控えるようにと私がマルティーン帝国に〝雨〟を依頼したのだよ。その時に少し聞いてしまってね」
「依頼って父上、マルティーンにわざわざ出向いたのか?」
「……メルテ。どこか様子がおかしい気がしたんだ。よくは分からないけど、普段のメルテだったらあんな事…。俺、考えが甘いかも知れないけどメルテの事を悪人だとは思えない…」
「ふふ、お前ならそう言うと思っていたよアーサ。困ってる人を見つけるとどうしても放っては置けないのだろう? ……同じなんだな、エテジアーナと」
「……母様と?」
ゆっくりと瞼を持ち上げたライオネル。ラインアーサは全てを見透かす様な眼差しに射抜かれた。しかしどこか寂しそうなその双眸にどきりとする。
「そう…。実際にメルティオール皇子は焦っていたのかも知れないね。実は、マルティーン帝国は今とても大変なのだよ。グロス皇帝が病で死の瀬戸際に立たされている。それで皇子は色々荒れていると聞いたものでね」
「どうして父上がそんな内情を知ってるんだ?」
「ここ最近の長雨。なぜ降っていたか分かるかい? 民が外出を控えるようにと私がマルティーン帝国に〝雨〟を依頼したのだよ。その時に少し聞いてしまってね」
「依頼って父上、マルティーンにわざわざ出向いたのか?」