《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ライオネルがとても申し訳なさそうに瞳を覗き込むのでラインアーサははっとして気を取り直した。

「この刺青…、他に何かあるのか? 最近だと寝起きとか、あと俺が差し迫った状態の時に痛む事があるんだよ…」

「……その刺青は、お前の力の暴走を抑えてくれている物でね。煌都 パルフェの司祭様に施してもらったのだけど覚えてないだろうね、まだほんの幼い頃だったから」

「力を抑える…? 暴走って何が…」

「……」

 俯いたままなかなか答えようとしない様子に、ラインアーサも急かさずに待った。少し長い沈黙の後、漸くライオネルが口を開く。

「……お前はね、その力のせいで二度も死にかけてるんだ…」

「え?」

「一度目は産まれてすぐの時。二度目はある者の命を救った時。その時はまだ五つだったよ。いや、産まれてすぐの時も命を救ったんだ。エテジアーナの命をね…」

「……俺が、母様を……救った?」

 死にかけた。命を救った。どちらも身に覚えのない事だ。

「そう。彼女、アナは身体が丈夫じゃあなかったからね。イリアを出産した時でもかなり危険な状態で、二人目は望めないだろうと侍医からも言われていた。諦める他ないと」

「待って……だ、だったら何で俺を…」
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