《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「アナはお前を授かったと知った時。どうしても産むと譲らなくてね。私はとても嬉しかった反面、出産時に母体が耐えられずにアナが死んでしまうのでは? と恐怖にも苛まれたんだ。本当情けないよ」
自身が母の命を救ったなどと思った事もなかったが、話の内容はメルティオールが言っていた物と近く、ラインアーサは妙に緊張しながら話の続きを催促した。
「…っじゃあ、やっぱり父上は俺の事恨んでる…?」
「いや、その逆だよ。アーサには感謝してもしきれないくらいだ。……出産までの間、少しでもと体力を付けたり様々な努力をしたよ。アナと王宮の皆で協力し合い本当に色々ね。そうして無事にお前が産まれてきてくれた時はこの世のものとは思えない程の幸福を味わったんだ。……しかし、直後にその幸福から絶望の淵に立たされた」
「どういう事?」
「やはりアナの身体が持たなかったんだよ。こればかりは侍医達も手の施しようがない、とね……。私も一度、その時に彼女の死を覚悟した。今にも消えゆく命を目の前にして、ただ祈る事しか出来なかった…」
「待ってくれ、母様が亡くなったのは十一年前のあの内乱の後だ! なんで…っ」
「アナの特殊な能力の事はもうお前も知っているのかな?」
自身が母の命を救ったなどと思った事もなかったが、話の内容はメルティオールが言っていた物と近く、ラインアーサは妙に緊張しながら話の続きを催促した。
「…っじゃあ、やっぱり父上は俺の事恨んでる…?」
「いや、その逆だよ。アーサには感謝してもしきれないくらいだ。……出産までの間、少しでもと体力を付けたり様々な努力をしたよ。アナと王宮の皆で協力し合い本当に色々ね。そうして無事にお前が産まれてきてくれた時はこの世のものとは思えない程の幸福を味わったんだ。……しかし、直後にその幸福から絶望の淵に立たされた」
「どういう事?」
「やはりアナの身体が持たなかったんだよ。こればかりは侍医達も手の施しようがない、とね……。私も一度、その時に彼女の死を覚悟した。今にも消えゆく命を目の前にして、ただ祈る事しか出来なかった…」
「待ってくれ、母様が亡くなったのは十一年前のあの内乱の後だ! なんで…っ」
「アナの特殊な能力の事はもうお前も知っているのかな?」