《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……知ってるよ。他にない特殊な能力だろ…」

「そう、そもそもアナの身体が丈夫じゃあ無いのはその能力を酷使しすぎたからなんだ」

「うん、それも聞いた…」

「……アーサ。お前は容姿だけでなく性格もアナ譲りだ。そればかりかその能力も全て受け継いでいる。そして産まれたばかりの赤ん坊なのに母親の危機は解る物なのかな?」

「まさか……俺が、その能力を使って母様を救ったっての?」

「それだけじゃあ無い。お前は能力〝そのもの〟まで吸い取ったんだ。だからそれ以来アナは能力を一切使えなくなったよ」

「っ…!!」

「その後も大変だったのだよ? おかげでお前は産まれてすぐ仮死状態に陥り回復するまで二十日間も目を覚まさなかったのだからね……それはもう見ていて辛かったよ」

 ライオネルは懐かしむ様に遠くを見つめながら話を進める。一方、ラインアーサは不思議な感覚を憶えながら聞いていた。

「……なんだかピンとこないよ」

「それはそうだよ、産まれてすぐの出来事だからね。覚えていないのも無理は無い。そんな事があったというのに、私は油断をしていてね。……お前が五つの時またしても同じような出来事があったんだ」

「また力を使った?」
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