《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「明日また来るよ。店の敷地から一人で出るなよ」

「……うん」

「じゃあ、いい子でな」

 別れ際、再度額に唇を落とし裏戸口へ向かう。階段を登り切った所を丁度貯蔵庫へ入って来たセィシェルに見つかった。

「スズ! なんだここに居たのか。今日はあんまり混まなさそうだから裏方中心に頼むな…って、 おい。あんたはもう帰るのか? やけに早い……っ! ちょっと待て、この野郎。さてはスズに何かしたな!?」

「ああ、はいはい。俺は今から帰る所だ。くれぐれもスズランの事頼むよ。じゃあなセィシェル」

「帰れ! そんなのあんたに言われなくたってちゃんと俺が……んんん!? ……スズ。今日仕事はもういい、部屋にもどってろ」

「え、どうして?」

「むっ、胸元の痣…! あと、そんな真っ赤な顔で接客が出来るかっての! 鏡見て来いよ、ったく!」

「えっ!?」

「くっそ……あんの変態ロリコン野郎~!!」

 ───酒場(バル)を後にしたラインアーサは日に日に強まる独占欲に自省していた。いくらこの後一緒に居れないからとはいえ大人気もなく目立つ所へ所有印まで付けてしまう始末。

「やり過ぎた…。いや、あんな顔されたら……駄目だな。最近本当に抑えが利かない…」
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