《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「父上、行ったことあるの?」

「……昔ね。というかユージーンは元気かい?」

「ユージーン…ってもしかしてマスターの事?」

「そうだよ。ユージーンは一癖も二癖もある口の悪い奴でね。相手するのがとても面白かったのに今ではすっかり酒場(バル)のマスターとして落ち着いてるみたいじゃあないか! よし、今度こっそり覗きに行ってみようかな。ははは」

「あの物静かなマスターが…? 想像出来ない…」

 想像は出来ないがほんの少し前その癖があり口の悪い……そんな人物に追い払われた事を思い出し、そこはやはり親子なのだろうかと無理矢理自分を納得させる。むしろライオネルが冗談抜きで酒場(バル)に足を運びそうで笑えない。

「まあ、私とユージーンは宿敵の様な物さ……」

「宿敵? ……何で」

「さあ、昔話は終わりだよ」

「そ、そうだな。それよりも今日の公務。早く始めてしまいたい! 急ごう父上」

「アーサはせっかちさんだなぁ。しかしこれをちゃんとこなさない限りお前はスズランさんを堂々と迎えに行けない心情だろうからね」

「そうなんだ。いつまでも逃げてないでちゃんと向き合わないと。それじゃあ俺、着替えてくるよ」

 そんな会話をしながらもライオネルと別れ、この後の準備に入る。
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