《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
この場所で不思議な少女に出逢った事を。
さくさくと歩を進めると次第に小川のせせらぎが大きくなる。
「あの子、父親見つかったのかな……」
泣いていたあの少女の涙を止めたいと思った事、父親を探すと約束をした事を今でも鮮明に思い出せるのは何故だろうか。
あの日以降。ラインアーサは来る日もこの場所で少女を待ったが、少女が再び姿を現す事は無かった。おそらく父親が迎えに来たのだろうと解釈し、次第にこの場所へ来る事自体少なくなって行ったのだ。
「……本当にあれが初恋だったのかな。じゃあ、初恋は実らないって言うのは嘘じゃあないんだな」
口に出してみると一気に恥ずかしくなりラインアーサは空を見上げた。
空はすっかり夜の色に染まりかけていた。
感傷に浸っていると俄かに何時もとは違う風が吹き抜け森の樹々が騒つく。ラインアーサは直感的に警戒し声をあげた。
「誰だ!?」
瞳を凝らすと、小川にかかる小さな石橋の中央に誰かが立っている。だが辺りはもう薄暗く、はっきりと姿が見えない。警戒を解かぬまま確認する為に近づくと、その人影の輪郭から女性らしいという事に気が付き少し気が抜けた。
さくさくと歩を進めると次第に小川のせせらぎが大きくなる。
「あの子、父親見つかったのかな……」
泣いていたあの少女の涙を止めたいと思った事、父親を探すと約束をした事を今でも鮮明に思い出せるのは何故だろうか。
あの日以降。ラインアーサは来る日もこの場所で少女を待ったが、少女が再び姿を現す事は無かった。おそらく父親が迎えに来たのだろうと解釈し、次第にこの場所へ来る事自体少なくなって行ったのだ。
「……本当にあれが初恋だったのかな。じゃあ、初恋は実らないって言うのは嘘じゃあないんだな」
口に出してみると一気に恥ずかしくなりラインアーサは空を見上げた。
空はすっかり夜の色に染まりかけていた。
感傷に浸っていると俄かに何時もとは違う風が吹き抜け森の樹々が騒つく。ラインアーサは直感的に警戒し声をあげた。
「誰だ!?」
瞳を凝らすと、小川にかかる小さな石橋の中央に誰かが立っている。だが辺りはもう薄暗く、はっきりと姿が見えない。警戒を解かぬまま確認する為に近づくと、その人影の輪郭から女性らしいという事に気が付き少し気が抜けた。