《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
ハリの言い分は最もだ。だがそれでも、自身の気持ちにもう嘘を吐きたくない。
今度は広間の隅々まで聞こえるように大きく声を張るラインアーサ。
「皆、自分には身に余る令嬢ばかりで本当に有難い。だが富も権力も側室も必要ないんだ! 自分は生涯心に決めた〝ただ一人〟を愛し抜き、大切に守りたい。その一人とこの国を盛り立てて行きたいと思っている」
ラインアーサが述べた謝意に令嬢達は一度大人しくなったもののやはり一筋縄ではいかず、納得はしてくれない。
「でしたら不躾なのは承知の上ですが、わたくし達の中からその一人を選んで頂く事は出来ないのですか? わたくしはこの国を一緒に支えていく覚悟の上で此処に居りますので!」
令嬢たちの熱は引きそうにない。
「そうか……では俺には…」
既に心に決めた人がいる。
意を決してそう声にしようとした瞬間、広間の扉が大きく音を立てて開かれた。その扉の先から見知った人物がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。何処か嬉しそうに微笑みを讃えたコルトの靴音がやけに響く。彼はライオネルの側近だ。
問題はその少し後ろを歩いてくる人物。頭の天辺から足の先まで見紛う筈が無くそれでいて愛しい、大切な存在───。
今度は広間の隅々まで聞こえるように大きく声を張るラインアーサ。
「皆、自分には身に余る令嬢ばかりで本当に有難い。だが富も権力も側室も必要ないんだ! 自分は生涯心に決めた〝ただ一人〟を愛し抜き、大切に守りたい。その一人とこの国を盛り立てて行きたいと思っている」
ラインアーサが述べた謝意に令嬢達は一度大人しくなったもののやはり一筋縄ではいかず、納得はしてくれない。
「でしたら不躾なのは承知の上ですが、わたくし達の中からその一人を選んで頂く事は出来ないのですか? わたくしはこの国を一緒に支えていく覚悟の上で此処に居りますので!」
令嬢たちの熱は引きそうにない。
「そうか……では俺には…」
既に心に決めた人がいる。
意を決してそう声にしようとした瞬間、広間の扉が大きく音を立てて開かれた。その扉の先から見知った人物がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。何処か嬉しそうに微笑みを讃えたコルトの靴音がやけに響く。彼はライオネルの側近だ。
問題はその少し後ろを歩いてくる人物。頭の天辺から足の先まで見紛う筈が無くそれでいて愛しい、大切な存在───。