《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「申し訳ございません、アーサ殿下。只今もう一人の御令嬢が遅れて到着致しましたので、どうかこちらの方も晩餐会に参加させていただきたく急いで参りました」
「……そう、だったのか」
なんとか言葉を絞り出したものの、驚きの方が大きく思考が追いつかない。変わらずにこやかなコルト。状況が飲み込めず目で訴えると、何やら微笑みながらに片目を閉じて合図を送ってきた。
「あ。これは誠に申し訳ございません! 殿下は今まさにこちらに揃っている御令嬢の皆様の内から生涯を共にする御仁を御選択なさる所でしたね! もう邪魔は致しませんのでどうぞ続けてください」
突如現れ強引に流れを断ち切ったコルトに広間の令嬢たちも圧倒され押し黙る。しかしその沈黙の中、コルトの隣に居る人物がおもむろに自己紹介を始めた。
薄紅色の美しいドレスに身を包み、美しい動作で頭を垂れる。
「……小フリュイ公国出身の、スズラン・フルールと申します。アーサ様、どうぞよろしく、お願いします…」
たったそれだけの短い挨拶。
髪を留め上げている為なのか普段の雰囲気とはまた違って見えた。緊張して少し声が震えているのがわかる。そのままの体勢を崩さずなかなか顔を上げようとしない。
「……そう、だったのか」
なんとか言葉を絞り出したものの、驚きの方が大きく思考が追いつかない。変わらずにこやかなコルト。状況が飲み込めず目で訴えると、何やら微笑みながらに片目を閉じて合図を送ってきた。
「あ。これは誠に申し訳ございません! 殿下は今まさにこちらに揃っている御令嬢の皆様の内から生涯を共にする御仁を御選択なさる所でしたね! もう邪魔は致しませんのでどうぞ続けてください」
突如現れ強引に流れを断ち切ったコルトに広間の令嬢たちも圧倒され押し黙る。しかしその沈黙の中、コルトの隣に居る人物がおもむろに自己紹介を始めた。
薄紅色の美しいドレスに身を包み、美しい動作で頭を垂れる。
「……小フリュイ公国出身の、スズラン・フルールと申します。アーサ様、どうぞよろしく、お願いします…」
たったそれだけの短い挨拶。
髪を留め上げている為なのか普段の雰囲気とはまた違って見えた。緊張して少し声が震えているのがわかる。そのままの体勢を崩さずなかなか顔を上げようとしない。