《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……顔をあげて…?」
静かに声をかけると身体を起こしたスズランと視線が交わる。いつになく瞳が煌めいて見えるのは広間の照明が反射しているからだろうか。普段のあどけなさは無く、何処となく気品が漂う。
「……アーサ、様…」
「綺麗だ。スズラン…」
スズランにアーサと呼ばれ不思議な気持ちになったが、僅かに震えるスズランの右手をそっとすくい取り手の甲に口づけた。次の瞬間広間全体が大きくどよめいた。
「…っな、何んなのあの娘!! 後から来て…!」
「一体何処の家の者なの…?」
「フルールっていったらあの有名なフルール一族のご令嬢ではないかしら?」
「まさか…! だってフルールといったら一族の血を守る為他族とは交わらないって噂ですもの」
「じゃあ……でも…」
様々な憶測や意見が飛び交う中、ラインアーサは自己紹介を返すのも忘れてスズランを抱きしめていた。
「…っ!!」
腕の中でスズランがびくりと身体を反応させたが離すつもりはない。周囲に飛び交う悲鳴にも似た高い叫び声も、批難する声ももう耳に入らなかった。
僅かに確認出来たのはライオネルとコルトの満面の笑み。ハリの呆れ顔。
スズランの胸の鼓動───。
静かに声をかけると身体を起こしたスズランと視線が交わる。いつになく瞳が煌めいて見えるのは広間の照明が反射しているからだろうか。普段のあどけなさは無く、何処となく気品が漂う。
「……アーサ、様…」
「綺麗だ。スズラン…」
スズランにアーサと呼ばれ不思議な気持ちになったが、僅かに震えるスズランの右手をそっとすくい取り手の甲に口づけた。次の瞬間広間全体が大きくどよめいた。
「…っな、何んなのあの娘!! 後から来て…!」
「一体何処の家の者なの…?」
「フルールっていったらあの有名なフルール一族のご令嬢ではないかしら?」
「まさか…! だってフルールといったら一族の血を守る為他族とは交わらないって噂ですもの」
「じゃあ……でも…」
様々な憶測や意見が飛び交う中、ラインアーサは自己紹介を返すのも忘れてスズランを抱きしめていた。
「…っ!!」
腕の中でスズランがびくりと身体を反応させたが離すつもりはない。周囲に飛び交う悲鳴にも似た高い叫び声も、批難する声ももう耳に入らなかった。
僅かに確認出来たのはライオネルとコルトの満面の笑み。ハリの呆れ顔。
スズランの胸の鼓動───。