《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
王宮は常に警備の目が行き届いている筈だが、ごく稀に曲者が敷地内に紛れ込む事があるのだ。本日の様に非日常である祝祭の日などは特に狙われやすい。
「何者だ? 此処を王宮の敷地内だと分かって侵入したのか?」
警戒を解かずに低い声でその女性に詰め寄ると、少し怯えた声色で謝罪の言葉が返ってくる。
「……す、すみません! 今すぐ立ち去ります、ごめんなさいっ」
次の瞬間。ラインアーサの目を真っ直ぐ見ながら謝罪をする女性の顔を認めて、鼓動がどきりと高鳴った。
薄暗い視界の中、不確かではあったが───。
目の前の女性の可憐な顔立ちや、薄い千草色の髪や透き通る様な白い肌は、ラインアーサの記憶の中の少女と良く似ていたのだ。しかし、こう暗くては決定的な瞳の色が確認出来ない。あの少女は、美しく淡い虹色の瞳をしていたはずだ。
「……あ、の? 本当にすみませんでしたっ」
ラインアーサは、急いで踵を返そうとした女性を思わず呼び止めた。
「待て。一体此処に何をしに来た?」
まさか……
あの少女なのか?
速まる鼓動を抑えつけ、期待する様な視線を送る。目の前の女性は、困った様な表情でラインアーサを見つめ返していた。
「何者だ? 此処を王宮の敷地内だと分かって侵入したのか?」
警戒を解かずに低い声でその女性に詰め寄ると、少し怯えた声色で謝罪の言葉が返ってくる。
「……す、すみません! 今すぐ立ち去ります、ごめんなさいっ」
次の瞬間。ラインアーサの目を真っ直ぐ見ながら謝罪をする女性の顔を認めて、鼓動がどきりと高鳴った。
薄暗い視界の中、不確かではあったが───。
目の前の女性の可憐な顔立ちや、薄い千草色の髪や透き通る様な白い肌は、ラインアーサの記憶の中の少女と良く似ていたのだ。しかし、こう暗くては決定的な瞳の色が確認出来ない。あの少女は、美しく淡い虹色の瞳をしていたはずだ。
「……あ、の? 本当にすみませんでしたっ」
ラインアーサは、急いで踵を返そうとした女性を思わず呼び止めた。
「待て。一体此処に何をしに来た?」
まさか……
あの少女なのか?
速まる鼓動を抑えつけ、期待する様な視線を送る。目の前の女性は、困った様な表情でラインアーサを見つめ返していた。