《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「へ? ……二人ともって俺も!?」

「ふんっざまあみろだ!」

「……」

「もう、ばかぁ…!」

 スズランはベッドに突っ伏し真っ赤な顔をシーツに押し付けまだ何か叫んでいる。 今日一日、一気に色々な事が起こり過ぎて気持ちが追いつかないのだろう。慣れない服装で慣れない場所に来てくれて、ラインアーサの気持ちにも応えてくれた。今日はゆっくり休んで欲しい。
 ラインアーサはスズランの頭をそっと撫で小さくおやすみと告げると静かに部屋を後にした。しかしその反面セィシェルへの憤りは収まらない。

「おいセィシェル! お前のせいで俺まで追い出されたじゃあないか」

「へんっ! 知ったことか! 俺の見える所で抜け駆けするのが悪い。このロリコン野郎」

「お前なぁ、その性格本っ当に損だぞ」

「損でも何でもスズの事を守りたいのは俺だって同じなんだからな…」

 こればかりはセィシェルの気持ちも分かるだけに何も言い返せない。その強い眼差しは嘘を吐いていない証拠だ。だが、今日は何時もよりじっくりと顔を見てくる。

「何だ…? 人の顔じっと見て」

「な、何でもねぇし! 早く帰れば? どうせ明日も来る癖に」

「ああ、収穫祭(リコルト・フェスト)の前日辺りまでは来るつもりだ…」
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