《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「やっぱり…、そう思う…?  父上も」

 そう返すとライオネルは複雑な表情で考え込んだ。

「……彼女は実は…。いや、今コルトが小フリュイ公国について多少の調査を進めているが、彼女自身の事はユージーンの方が知っているんじゃあないかな」

「マスターが…?」

 妙な言い回しの後が気になったが、そう言われればそうだと納得する。

「そう。薄々気がついて居るかも知れないが、何故この国に小フリュイ公国出身のフルール族が居るのか…。どういった経緯で来たのかもね。アーサも今度ユージーンに聞いてみるといい」

「雷花の国、小フリュイ公国…。フルール族」

「彼女が得体の知れない者に狙われるのもそれが関係している可能性は充分にあるからね。さて、それだけ伝えに来たんだ。あとはお暇するよ! 今日はお疲れ様、ゆっくりおやすみアーサ」

「ああ、父上こそお疲れ様。……その、スズランを呼んでくれてありがとう」

「ふふ、ちょっとしたサプライズだよ! 喜んでもらえて何よりさ」

「……本当に、かなり驚いたけどな!」

「アーサを驚かせたかったから大成功だよ!」

「全く、父上には一生敵わないよ。おやすみなさい…」

 ライオネルを見送った後もスズランの身の上について考え続けたが、堂々巡りで考えがまとまらない。しかし彼女の出身が何処でも、何者でもラインアーサにとっては関係無かった。
 この先どんな事があろうとも守り抜き、彼女の平穏な日々を取り戻すという決意を新たにしたラインアーサだった。

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