《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

祭りの夜に


 ───秋の高く澄み渡った空に喧しく祝砲の轟音が響く。それと同時に動き出す街は何処も彼処も色鮮やかに飾られていた。

 シュサイラスア大国で最も盛り上がりを見せる祝祭、収穫祭(リコルト・フェスト)。昨晩の前夜祭でも既に様々な催しが行われたが本祭の今日は更に賑わう事だろう。
 今年の収穫祭に選ばれた作物は南瓜だ。今季の収穫と売り上げ最多記録を叩き出した南瓜が今年の収穫祭の主役なのだ。主役の南瓜で作ったランタンや置物などで飾られ何時もよりも少し不思議な雰囲気になる城下の街。毎年この飾り付けを楽しみに、国外からも観光客が集まる。前夜祭と後夜祭を含め七日間。国民たちはこの実りの一年に感謝の気持ちと、また翌年の豊作を願い国を盛り立ててゆく。
 シュサイラスアの民は実に祭をよく好む。そういった明るく陽気な国民性なのだ。

 ───本日が主役といえば王宮にも一人。

「アーサ様。おはようございます!」

 弾む声に振り向けば、少し頬を赤らめたリーナが嬉しそうにこちらに小走りで向かって来る所だった。

「おはよう、リーナ。どうしたんだこんな早くに」

 リーナは目の前で丁寧にお辞儀を終えると、にこやかな表情で話し出す。
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