《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「…さてと。俺も一度部屋に戻るか」

 小フリュイ公国に関する古い書物を一冊だけ手元に残し、あとは全て書棚に戻すとラインアーサも書物庫を後にした。持ち出した書物は古ぼけていたが、小フリュイ公国関連の書物では随一の厚みがあった。自室へ移動する間も惜しみ書物を広げ廊下を歩く。頁の傷みはあるものの挿絵を交えながらわかりやすく書き記してある。

 [小フリュイ公国]
 ・・・雷花の術師が多く住む国。
 気候は常春。国内はいつも様々な草花が咲き乱れている。現在では絶滅危惧種となっている植物は通じて公国では現存。様々な草花が高値で各国と取引されている。雷花の花が咲く頃に開催される花祭りが有名。
 ・・・女系の国。古くから民は女性に割合が偏っている。故に、代々国を治めているのは公妃である。公妃はフラウール宮殿に身をおくと定められている。花の都フラウに民の居住区がある。
 ・・・落雷が多く、きわめて落雷被害が絶える事のない奏雷通りは観光名所でもある。マルティーン帝国、シュサイラスア大国と提携を結び、各国へ雷雲を届ける事もある。
 ・・・民は男女ともに眉目秀麗、容姿端麗である所為か愛好者同士の間で人気が高く好奇的に扱われる事例が伝えられている。リノ族の中でも特化して乾燥や冷気に弱く、他の国や地域に移民したという記録は今の所無い。
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