《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「うーん……中々に掴めないな。やっぱりスズランに繋がりそうな情報は少ないか?」

 唸りながらも次の頁を開く。

 ・・・フリュイ人のほとんどが一族の血を守る為、他種族とは滅多に交わらない。特に公族であるフルール一族は徹底して交わりを避けて来た為か古代種に近いのが特徴。

「フルール一族……」

 あの晩餐会(バンケーテ)の夜、スズランが名乗ったのがフルールという家名だった。
 さらに頁を読み進めてゆく。

 ・・・現在では派生したフルールの家名から、公族でなくとも一般の民の間に広まっている。また、天然の香草や草花、果実の様な香気を放つのが公族の特徴として挙げられる。この香りは古代種に近い公族のみが分泌するとされ、人を虜にする効力があると言われているが定かではない。

「…っ! 公族…?」

 確かにスズランに近づくととても良い香りがする。特に抱きしめたり口づけを交わす時などより濃厚になる。あの香りにあてられて冷静な判断を奪われた事は一度ではない。だからといってスズランが小フリュイ公国の公族だと判断するのは早計だ。

「人を虜にする、、か」

 ラインアーサがスズランに惹かれたのはスズランがフルール一族で古代種に近い公族だから?
 そう考えれば何もかも合点がいくのだろうか。
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