《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 こうして国を挙げて自身の誕生を祝ってもらうのは久々だが、有り難さ反面どうしても気恥しい気持ちが勝ってしまう。

「ああ、もう……。あんな公の場で抱きつかなくたってもいいのに」

 ライオネルの徹底した親馬鹿ぶりは今に始まった事ではなく、既に国中に知れ渡っている。それを皆温かい目で見守ってくれているのだ。

「……まったく、俺も幸せ者だよな」

 とりあえず堅苦しい正装を解く為立ち上がった所で部屋の扉が叩かれた。

「お疲れ様です……」

「ん? ハリか。 入ってこいよ」

 最近またすれ違いばかりで殆ど話せていなかったのもあり、思わず声の主を自室に招き入れる。

「失礼します」

「こんな格好で悪いな」

 上着を脱ぎながらハリに向き合う。

「……お召し替え中だったのですね。手伝います」

「いいよ別に、急にどうしたんだ?」

「いえ、急にでは…。私は貴方の側近とは名ばかりで、実質的には何も役に立って居ないので……」

「何だ。そんな事気にしてたのか?」

「ええ。貴方は私を側近として傍においてくれているものの、身の回りの事などは殆どご自分でされてしまう」

 突然のハリの告白に驚く。以前より言葉数が多くなって来たとは思っていたがこの様な発言は初めてだ。
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