《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……ありがとうございます。って……そう言えば満足する?」
突如、耳元に冷淡で抑揚のない声が響いた。一瞬誰の声なのか把握出来なかったが、自室には自分とハリしか居ない。
「ハリ…?」
背後から伸びてきた白く長い腕が衣装棚の扉を強く押した。扉は鈍い音をたてて勢い良く閉じられ、急にその場の空気が重くなる。
更にその腕に阻止され、振り向くことが出来ない。背中に妙な緊迫感が走る。
「……どこ行くの? それより僕ともっとお喋りしようよ。いい話と悪い話があるんだけど、どっちから聞きたい?
「……?」
突然の質問に戸惑う。横目に垣間見えるハリの口元は薄らと笑みを浮かべ、その表情や話し方は通常時の彼とあからさまに相違がある。
「僕、君のお節介には呆れてるんだ。……本当にくだらない」
ハリは語尾を強調して吐き捨てると、ラインアーサの髪紐を指で引きつまんだ。結んだ髪が解けて首筋にかかる。
「!? な……んっ」
「アハハ。怒った? 髪紐、返して欲しい? ねえ、ラインアーサ」
態とらしく挑発するハリに違和感を覚える。まるで本当に別人の様な───。
「……ハリ、まさか記憶が…」
「記憶ね…。まあ、こっちは君にとっていい話かな。もう僕はどうでもいいんだけどね、あんな家族。ああ、でも悪い話の方が面白いと思うよ。早い話、僕の息の根を…っ!? っ…うぐ、っぁ…!」
溜息を混じえ退屈そうに話すハリ。しかし一変して呻き声をあげた。
突如、耳元に冷淡で抑揚のない声が響いた。一瞬誰の声なのか把握出来なかったが、自室には自分とハリしか居ない。
「ハリ…?」
背後から伸びてきた白く長い腕が衣装棚の扉を強く押した。扉は鈍い音をたてて勢い良く閉じられ、急にその場の空気が重くなる。
更にその腕に阻止され、振り向くことが出来ない。背中に妙な緊迫感が走る。
「……どこ行くの? それより僕ともっとお喋りしようよ。いい話と悪い話があるんだけど、どっちから聞きたい?
「……?」
突然の質問に戸惑う。横目に垣間見えるハリの口元は薄らと笑みを浮かべ、その表情や話し方は通常時の彼とあからさまに相違がある。
「僕、君のお節介には呆れてるんだ。……本当にくだらない」
ハリは語尾を強調して吐き捨てると、ラインアーサの髪紐を指で引きつまんだ。結んだ髪が解けて首筋にかかる。
「!? な……んっ」
「アハハ。怒った? 髪紐、返して欲しい? ねえ、ラインアーサ」
態とらしく挑発するハリに違和感を覚える。まるで本当に別人の様な───。
「……ハリ、まさか記憶が…」
「記憶ね…。まあ、こっちは君にとっていい話かな。もう僕はどうでもいいんだけどね、あんな家族。ああ、でも悪い話の方が面白いと思うよ。早い話、僕の息の根を…っ!? っ…うぐ、っぁ…!」
溜息を混じえ退屈そうに話すハリ。しかし一変して呻き声をあげた。