《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 側でリーナも嬉しそうに笑っている。
 彼女はイリアーナの行方が分からない間、ずっと自身を責め、いつも何処か申し訳なさそうにしていた。イリアーナが無事帰国し、やっとリーナにも本当の笑顔が戻ったのだと嬉しさで心が震える。

「アーサ? まだまだたくさんあるのよ。私がお祝い出来なかった十一年分の想いを込めて作ったの…」

「……姉上、リーナ。ありがとう! すごい嬉しいよ。俺たくさん食べるから」

 にしてもものすごい品数の焼き菓子たち。とても一人で食べ切れる量では無い。そうだ…、と一つ提案しようとしたがイリアーナも同じ考えだったらしい。

「ねえ! せっかくたくさん作ったのよ、みんなも呼んでお祝いパーティにしましょう!」

「俺も丁度そう思ってたんだ。じゃあ俺、みんなの事を呼んでくるよ」

「お願いね。あ! アーサ、ちょっと待ってちょうだいっ!!」

「んん? そんな大きな声でどうしたんだよ姉上」

 踵を返そうとした所、何やら含みのある笑みを浮かべているイリアーナに呼び止められた。

「あのね。そのぉ…、スズランちゃんも呼んだっていいのよ?」

「なっっ!? 何で姉上がスズランの事知ってるんだよ!?」

「だって私だけまだ会うことができていないのよ? ね、リーナ」
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