《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……はい。あたしは先日の晩餐会の日にお会いしました…」
「うふふ、ジュリからも色々聞いてるんだから。それに、正式に婚約者となるのだから私にもちゃんと紹介して欲しいものね?」
「ま、まだ正式に決まった訳じゃあ……」
「何よぅ! 私には合わせてくれないの?」
「わかったよ…!」
「じゃあ決まりね! とびきりの茶葉を選んで待ってるわ」
イリアーナは昔から色恋の事になると少し前のめりな気がしていたが、あんなにもにこやかに紹介してほしいと頼まれてしまえば断りようもない。
「───ったく…、ジュリの奴!! また余計なことを…」
と思いつつも浮き立つ心は正直だ。
何時もの様に王宮の横庭から森を抜け酒場の裏庭へ足を運ぶと、そこで早くも愛らしい姿を捉える。お馴染みの給仕服に身を包み、少し疲れた様子なのは朝からずっと店の準備でもしていたのだろう。本日は収穫祭の本祭。酒場は書き入れ時で繁忙を極める筈だ。
それでもつい勢いで声をかけてしまった。
「……スズラン!」
「っ…ライア! どうしたの? お店のお手伝いは昨日までって聞いてたのに…、でも嬉しい」
驚くもふわりと笑顔になるスズランの可愛らしい姿に口元が緩む。会えると思ってなかった分純粋に嬉しい。その上唐突に今日が自身の誕生日だと伝えるのは何となく照れくさい。
「うふふ、ジュリからも色々聞いてるんだから。それに、正式に婚約者となるのだから私にもちゃんと紹介して欲しいものね?」
「ま、まだ正式に決まった訳じゃあ……」
「何よぅ! 私には合わせてくれないの?」
「わかったよ…!」
「じゃあ決まりね! とびきりの茶葉を選んで待ってるわ」
イリアーナは昔から色恋の事になると少し前のめりな気がしていたが、あんなにもにこやかに紹介してほしいと頼まれてしまえば断りようもない。
「───ったく…、ジュリの奴!! また余計なことを…」
と思いつつも浮き立つ心は正直だ。
何時もの様に王宮の横庭から森を抜け酒場の裏庭へ足を運ぶと、そこで早くも愛らしい姿を捉える。お馴染みの給仕服に身を包み、少し疲れた様子なのは朝からずっと店の準備でもしていたのだろう。本日は収穫祭の本祭。酒場は書き入れ時で繁忙を極める筈だ。
それでもつい勢いで声をかけてしまった。
「……スズラン!」
「っ…ライア! どうしたの? お店のお手伝いは昨日までって聞いてたのに…、でも嬉しい」
驚くもふわりと笑顔になるスズランの可愛らしい姿に口元が緩む。会えると思ってなかった分純粋に嬉しい。その上唐突に今日が自身の誕生日だと伝えるのは何となく照れくさい。