《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ライア…。大丈夫?」

「あ、ああ」

「でも、やっぱりお目目の色がおんなじだよー?」

 子供の目は誤魔化せないと言った所だろうか。しかし今、それも街の広場のど真ん中で己の正体を明かす訳にはいかない。シュサイラスアの民は、行事やこういったお祭り騒ぎを好む民族性。舞い上がり確実に揉みくちゃにされてしまう。そうなるとスズランに危害が及ぶ可能性も出てくる。やはり収穫祭(リコルト・フェスト)当日に街に出るなど浅はかだったと反省せざるを得ない。それでもリタの眼をそらさず否定を試みる。

「リタ。違うんだ。俺たちは…」

「わかったー! ないしょなんだ? スズランおねえちゃんとひみつのでぇとしてるんだね!」

「っ…!!」

「デ、デート……なの?」

 ないしょ話の様に可愛らしい仕草で話すリタ。しかし内容は的確だ。何も言えずに居るとリタの顔がぱっと明るくなり、そのまま立ち上がると大きく叫んだ。

「ママ…っ!!」

 リタの声に女性が血相を変えて駆け寄ってくる。

「リタッ!! あなた…っ何処に行っちゃったのかと…! 本当に探したのよ!? 駄目じゃあないのこんなに人が多いのにうろちょろしちゃあ」

「だってふんすいのお水がとってもきれいだから、ちかくで見たかったんだもん」
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