《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
そのまま王宮の横庭に繋がる森の小道に向へかった。ここまで来ると街の喧騒もだいぶ遠くなる。横目でスズランを盗み見ると俯いたままだ。このぎこちない空気を打ち破るべくラインアーサは切り出した。
「……スズランは俺と初めて会った日の事覚えてる?」
「もちろん…! ライアが帰国した時のお祭りの日にここの森で」
スズランは弾かれた様に顔をあげ、少し早口でそう答えた。やはり〝あの日〟の事は覚えていないか…、と少し淋しさに似た感情を覚える。
「そうか、そうだよな…」
「わたし勝手にライアのこと警備隊の人と勘違いしちゃって、本当にごめんなさい!」
やっと視線が重なり自然と頬が緩んだ。
「俺の方こそごめん…、でも懐かしいな。まだそんなに経ってないのに」
「っ…わたし、あの時はライアとこんなふうになるなんて思ってなかった…」
「……俺は…。此処でスズランと会った時、運命なのかと思ったよ」
彼女と再び出逢い、今こうして傍に居てくれる。運命の様な巡り合わせに感謝し、今こそずっと大切にしてきた想いを伝える時だ。
「運命…?」
「果たせなかった約束を、今度こそ守る為の」
確かめる様にそう口に出すと一気に気持ちが固まった。もう二度とこの手を離したくない。繋いでいた手を握をもう一度強く握り返す。
「約束って? それに、ライアはいつからわたしのことを知っているの?」
「……」
「わたし、ライアの事もっと知りたい…!」
先ほどまで落ち込んでいたスズランだが今はしっかりとした眼差しでラインアーサ見据える。その瞳は強く輝きを放っていた。
小川に架かる小さな石橋の上。
見つめ合う二人の間にふわりと心地の良い風が吹きそよいだ。
⌘ 収穫祭 ⌘ 終
「……スズランは俺と初めて会った日の事覚えてる?」
「もちろん…! ライアが帰国した時のお祭りの日にここの森で」
スズランは弾かれた様に顔をあげ、少し早口でそう答えた。やはり〝あの日〟の事は覚えていないか…、と少し淋しさに似た感情を覚える。
「そうか、そうだよな…」
「わたし勝手にライアのこと警備隊の人と勘違いしちゃって、本当にごめんなさい!」
やっと視線が重なり自然と頬が緩んだ。
「俺の方こそごめん…、でも懐かしいな。まだそんなに経ってないのに」
「っ…わたし、あの時はライアとこんなふうになるなんて思ってなかった…」
「……俺は…。此処でスズランと会った時、運命なのかと思ったよ」
彼女と再び出逢い、今こうして傍に居てくれる。運命の様な巡り合わせに感謝し、今こそずっと大切にしてきた想いを伝える時だ。
「運命…?」
「果たせなかった約束を、今度こそ守る為の」
確かめる様にそう口に出すと一気に気持ちが固まった。もう二度とこの手を離したくない。繋いでいた手を握をもう一度強く握り返す。
「約束って? それに、ライアはいつからわたしのことを知っているの?」
「……」
「わたし、ライアの事もっと知りたい…!」
先ほどまで落ち込んでいたスズランだが今はしっかりとした眼差しでラインアーサ見据える。その瞳は強く輝きを放っていた。
小川に架かる小さな石橋の上。
見つめ合う二人の間にふわりと心地の良い風が吹きそよいだ。
⌘ 収穫祭 ⌘ 終