《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「なんで…、どうしてもっと早く教えてくれなかったの? わたしずっと…」

「スズラン初めは俺の事嫌ってただろ? 夢を壊したら悪いと思って言い出せなかったのと、後はやっぱり照れて言えなかったんだ。ごめん」

「ちがう…っライアのこと嫌ってなんかないの! セィシェルが近づいちゃ駄目ってすごく怒るし、それにわたしが勝手に嫉妬をしてっ…あ、でも嫌な思いさせてわたしこそごめんなさい…」

「そうなのか? じゃあお互い様って事で、相子だな」

 初めから嫌われていた訳では無いと知り嬉しくなり、ラインアーサがはにかんで見せるとスズランは両手を真っ赤な頬に当てて困った様に俯いた。

「こ、これ夢じゃないよね? ……もしかして今日の出来事ってぜんぶ夢!? だって、ライアと街のお祭り一緒に見て、一緒にデート! やっぱり夢かも……それで夢の人がライアで、でもライアが夢じゃないって、うぅ…、なんだか頭の中がくるくるする…」

「くくっ。落ち着けって、夢じゃあないよ。ほらおいで」

 一人で混乱気味のスズランが可愛くてもう一度抱き寄せる。華奢だが抱き心地の良い身体に甘く香る君影草がラインアーサを掻き立てる。

「ん、んんっ…くるしいよ、ライア」
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