《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 少し潤んだ瞳で下から睨まれた。その視線に射抜かれ理性を失いかけるも何とか耐える。

「駄目だ……その顔禁止」

「むぅ…」

「膨れても駄目…。余計可愛い」

「なっ…! からかわないで、もう…」

「からかってない」

「でも…っ」

 恥ずかしそうに視線を逸らすスズラン。

「本当可愛い……出来るならこのまま連れ去って独り占めしてしまいたい」

「ふぇっ…!?」

「あっ…いや、その…。違う、いや違わない! じゃあなくて心配なんだ。スズランが得体の知れない奴らに狙われてるのは確かで、いつまたこの間みたいに攫われないか。もう絶対にあんな思いさせたくないから」

「ライア…」

 つい本音が出てしまった。本音と建前。誤魔化す訳では無いが以前から案として出ていた件を被せるも格好がつかない。

「スズラン…。暫くの間王宮に来ないか? この国で一番安全な場所は王宮なんだ」

「うん…。その事はマスターからも何回か聞いてるよ。でもわたしマスターやセィシェルに今までの恩を返したいの! 離れたら家族として受け入れてくれた二人に何も出来なくなっちゃう気がして…」

 スズランの思いは理解出来る。しかし。

「でも何かあってからじゃあ遅いんだ! ……スズランは狙ってくる奴らに心当たりは?」
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