《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……ん……さ、寒い」

 急激に体温が下がったのかスズランの身体は小刻みに震えていた。

「スズラン大丈夫か…!?」

「失礼、お胸元を緩めたいのですが…」

「あ、ああ。俺がやるよ」

 ラインアーサはスズランの服の胸元の紐を解いて緩めた。

「…っ、……ん…」

「ごめんスズラン。服、少し緩めたよ」

 息苦しさに耐えながらも小さく頷いて返事を返すスズラン。だが、エルベルトは状態を診るなり首を傾げた。

「……ふむ。これはどうしたものか」

「スズランは一体? さっきまで元気だったのに突然、、俺の癒しの風もあまり効果が無いみたいなんだ…」

「そう…でしょうな。どうやら物理的な何かによって生命力自体が吸収されているというか、その様な感じと見受けられます。一体何故こうなったのか…」

「物理的な何かに、吸収? 」

「ええ。この症状が出る前に何か食べたり飲んだりは致しましたか?」

 スズランと一緒に街に出てから口にした物と言えば有名店が出していた屋台の果実茶のみだ。

「 ……そうだ果実茶を飲んだんだ。いや、でも一つの物を二人で分けて俺は何処も何とも無いから果実茶は違うと思う…」

「なるほど。ともかく何か原因があるのは確かです、それを早急に取り除かなくては」
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