《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「でもライア…!」

「大丈夫。廊下の様子を見るだけだよ」

 医務室の扉を薄く開きそこから廊下を見渡す。すぐに廊下の壁に設置してある照明器具が壊れているのが目に入った。本来設置してある箇所から落ちたのか廊下の床でバラバラに砕けている。
 破壊音は二度。二つ壊れた、となると老朽化で落ちたとは考えにくい。誰かが故意的に破壊したのか、一体なんの目的で……。思考を巡らせていると前方とは逆側、しかもすぐ後ろから三度目の破壊音、いや爆破音と言った方が正解に近い。

「っ!! 何なんだ!? ってハリ!」

 勢い良く振り向くと廊下の真ん中にハリが蹲っていた。両手を床に付き肩で息をしていてとても辛そうだ。思わずその名を呼び駆け寄ろうとするも拒否される。

「っ来るな!!」

「ハリ!?」

「苛つく、苛つく、苛つくっ……何もかも全てが苛つくんだよ!!」

「一体どうしたんだハリ! また具合が…」

「来るなよ? 今僕に近づいたら間違えてお前を吹き飛ばすからな、ラインアーサ」

 口調がいつもと違う。昼間に発作が起きた時と同様の雰囲気だ。更に通常(いつも)とは別人の様に冷たい闇夜の様な色を眼に宿しているのが気にかかる。

「……お前また…っまさかこの廊下の照明、全部お前がやったのか?」
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