《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
二人が席を探していると、少しぶっきらぼうな口調の若い男性店員が声をかけて来た。
「いらっしゃい。お客さん二人? 今日は祝祭の初日だったから混み合ってるんだ。あそこの狭い二人掛けしか空いてないけど、いい?」
「ああ。かまわないよ」
そもそも、祝祭が開かれた理由の半分はラインアーサにあるため気分は複雑だ。密かに店の中を見渡したが、先程店の裏手で出逢った女性らしき人物は見つけられなかった。
ラインアーサは麦酒、ハリは葡萄酒をそれぞれ注文し、この店自慢の料理を待つ。常秋というこの国の特殊な気候は作物や果実の収穫に多大な恵みをもたらし、中でも数多く造られる酒はどれも絶品だ。
「とりあえず、乾杯だな!」
「……」
ラインアーサが明るく声を上げるも、ハリは伏し目がちで尚且つ無言のまま葡萄酒の入った杯をラインアーサの杯へと合わせた。
「ノリ悪っ! なんだよハリ、それ本当に一番良い葡萄酒なんだからな」
「ですが、こんな所であまり騒いだら目立つかと思いまして」
聞き耳を立てれば周りの客たちは専ら、〝アーサ王子〟と〝イリア王女〟二人の同時帰国と言った最新の話題で持ちきりだった。
「いらっしゃい。お客さん二人? 今日は祝祭の初日だったから混み合ってるんだ。あそこの狭い二人掛けしか空いてないけど、いい?」
「ああ。かまわないよ」
そもそも、祝祭が開かれた理由の半分はラインアーサにあるため気分は複雑だ。密かに店の中を見渡したが、先程店の裏手で出逢った女性らしき人物は見つけられなかった。
ラインアーサは麦酒、ハリは葡萄酒をそれぞれ注文し、この店自慢の料理を待つ。常秋というこの国の特殊な気候は作物や果実の収穫に多大な恵みをもたらし、中でも数多く造られる酒はどれも絶品だ。
「とりあえず、乾杯だな!」
「……」
ラインアーサが明るく声を上げるも、ハリは伏し目がちで尚且つ無言のまま葡萄酒の入った杯をラインアーサの杯へと合わせた。
「ノリ悪っ! なんだよハリ、それ本当に一番良い葡萄酒なんだからな」
「ですが、こんな所であまり騒いだら目立つかと思いまして」
聞き耳を立てれば周りの客たちは専ら、〝アーサ王子〟と〝イリア王女〟二人の同時帰国と言った最新の話題で持ちきりだった。