《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「な…、何言って、さっき確かに死んでもらったって…」

 もう一度スズランの顔をのぞき込むが長い睫毛は硬く伏せられている。

「だから〝一度〟って言った筈。今は僕の魔像術(ディアロス)で仮死状態になってるだけ」

「そうなのか!? だったら早くその魔像術(ディアロス)を…」

「解除の仕方は〝僕が死ぬ〟以外知らない。このまま放っておけばいずれスズランは死ぬよ」

「知らないって、他に何かある筈だろ!?」

「必死だね」

「当たり前だ!!」

 先程からハリの調子に振り回されているが、僅かでもスズランを救う事か出来るなら、まだ間に合うのならば何だってする。必死に食い下がるラインアーサ。

「……あーあ、なんか退屈。僕死ぬつもりだったし? まあこの厄介な首輪は無事に外せたし鈴蘭がどうなろうと僕にはもう関係ないから」

「……ハリ! お前っ」

「あ、君の狼狽える所が見れたのは少しだけ面白かったよ? 結局君は自分可愛さに何も出来ないって事も分かったしね」

 またもや挑発をしてくるハリ。

「っそれは違う!」

「何が違うの? 君は目の前に仇がいたって殺す事も出来ない癖に…。僕だったら…」

「仇だからって命を奪って何になるんだよ!! 一時的な感情のまま相手を殺めたって何にもならない! むしろ…」
< 494 / 529 >

この作品をシェア

pagetop