《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「……そうかな。僕を殺せば今まで鈴蘭にかけた色んな魔像術(ディアロス)も解けるのに?」

 何故ここまで煽り立てる必要があるのか。
 これではまるで本当に死にたいと言っている様なものだ。ハリの瞳を覗き込んでも答えは解らない、しかしラインアーサにも出来ない理由はある。

「今まで…? いや、そうだとしても駄目だ」

「ほらね、やっぱり…」

「スズランは必ず俺が助ける! それと、俺にとってハリは家族で大切な存在なんだ。だから出来ない」

 ラインアーサの発言にハリの瞳が見開く。

「ば、馬鹿じゃあないの? この期に及んでまだ僕の事家族とか言って……鈴蘭だってどうやって」

「何だってやってみないと分からないだろ! やらないで後悔するよりずっといい」

 ラインアーサは寝台に横たわるスズランを優しく抱き起こす。

「おい……何を!? ラインアーサ。君…、髪が」

 気を高め身体の中心へ集める。
 再び左腕に疼痛が走るが身体の中心へと吸い込まれ、溶けながら小さな〝要〟へと落ち着く。それは始めからそこが居場所だったかの様に身体に馴染んだ。

 今までが不自然だったのだ。
 不思議と暖かく懐かしい気に包まれた。

 頭の中でまたあの声が聞こえる───。
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