《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
薄暗い部屋の隅で人知れず膝を抱えて泣いている光景が目の前に浮かび上がる。一体何があったのだろうと心配になる程だ。無理だと分かっていても傍に行って慰めたい衝動が沸き起こる。
その後も次々と様々な場面の切れ端が浮かんでは通り過ぎてゆく。どうやらこの切れ端はスズランの記憶の一部なのだろう。
その光景から見ても、ラインアーサと出逢う前はとても穏やかな環境で健やかに過ごしていた事が分かり安心に似た感情になる。
しかし次の場面が目に入るなり息を飲んだ。
真っ暗な荒野を誰かに手を引かれ走っている。相手は大人だろうか、まだ幼いスズランはその走る足に着いていけず転んでしまう。膝を擦って怪我をしたのに泣く間も与えられずまた走り出す。まるで何かに追われているかの様だ。
急な展開に戸惑うもその場面は消えてしまった。
次の場面が浮かび上がると同時に目を疑った。
ハリだ。スズランの記憶の中にハリがいる。今よりもまだ幼さの残る姿は丁度ラインアーサと出会った頃のハリに近い。咄嗟に首元を確認すると、二人の首元には既にあの首輪飾りが嵌められていた。
ハリはなんとも言い難い冷酷な視線をスズランに向けている。
その場面もまたすぐに消えてしまい、それ以上は何があったのかは分からない。
「ハリ…、スズラン……」
その後も次々と様々な場面の切れ端が浮かんでは通り過ぎてゆく。どうやらこの切れ端はスズランの記憶の一部なのだろう。
その光景から見ても、ラインアーサと出逢う前はとても穏やかな環境で健やかに過ごしていた事が分かり安心に似た感情になる。
しかし次の場面が目に入るなり息を飲んだ。
真っ暗な荒野を誰かに手を引かれ走っている。相手は大人だろうか、まだ幼いスズランはその走る足に着いていけず転んでしまう。膝を擦って怪我をしたのに泣く間も与えられずまた走り出す。まるで何かに追われているかの様だ。
急な展開に戸惑うもその場面は消えてしまった。
次の場面が浮かび上がると同時に目を疑った。
ハリだ。スズランの記憶の中にハリがいる。今よりもまだ幼さの残る姿は丁度ラインアーサと出会った頃のハリに近い。咄嗟に首元を確認すると、二人の首元には既にあの首輪飾りが嵌められていた。
ハリはなんとも言い難い冷酷な視線をスズランに向けている。
その場面もまたすぐに消えてしまい、それ以上は何があったのかは分からない。
「ハリ…、スズラン……」